還元剤の種類と役割 アルカリ性 酸性の使い分け
縮毛矯正の仕上がりやダメージ具合を左右する最大の要素の一つが、還元剤の選定です。還元剤は、毛髪内部のシスチン結合を切断して形状を変える役割を担います。主に使用される還元剤には、チオグリコール酸、システイン、システアミン、GMT(グリセリンモノチオグリコレート)などがあり、それぞれの特性に応じて使い分けが必要です。さらに、アルカリ性と酸性という薬剤のpH領域も、毛髪への作用に大きく関係してきます。
まず、代表的な還元剤の特徴を以下の表にまとめました。
還元剤名 |
分類 |
特徴 |
適した髪質 |
ダメージ度合い |
チオグリコール酸 |
アルカリ性 |
反応が強く還元力が高い |
健康毛、硬毛 |
高い |
システイン |
弱酸性〜中性 |
ダメージを抑えつつ柔らかく仕上げる |
細毛、ダメージ毛 |
低め |
システアミン |
中性 |
ニオイが強いが、柔軟性を出しやすい |
軟毛、クセの弱い髪 |
低〜中 |
GMT |
酸性 |
酸性ストレート対応、ダメージコントロールがしやすい |
ハイダメージ毛、ブリーチ毛 |
低 |
このように、還元剤の種類によって適した髪質や仕上がりが異なります。たとえば、ブリーチを繰り返したハイダメージ毛には、GMTのような酸性領域の還元剤が好まれます。一方で、健康な毛やハリコシのある毛髪には、チオグリコール酸を用いてしっかりと癖を伸ばすのが一般的です。
アルカリ性の還元剤は、キューティクルを開かせる力が強く、浸透性が高いため、速やかに反応します。ただし、ダメージの蓄積を招きやすく、pHコントロールと放置時間の管理が重要です。酸性領域の還元剤は、浸透性が穏やかで時間をかけて作用するため、髪への負担を軽減できますが、アイロン工程とのバランスが不可欠になります。
また、「還元チェック」は薬剤反応の確認として欠かせません。ウェット状態の髪をロッドに巻いてみて、伸びが出ているか、ゴムっぽさが残っていないかなどを確認します。これにより、過還元や軟化不足を防ぐことができるのです。
pHコントロールの仕組みと失敗しない設定方法
pH(ペーハー)とは、薬剤の酸性度またはアルカリ性度を示す指標であり、縮毛矯正の施術において極めて重要な要素となります。毛髪の等電点は約pH4.5〜5.5にあり、ここを基準としてpH値をコントロールすることで、薬剤の浸透や反応性、ダメージコントロールが大きく変わってきます。
まず、以下にpHと薬剤作用の関係を整理しました。
pH値の目安 |
薬剤の状態 |
毛髪への影響 |
3〜5 |
酸性 |
キューティクル閉鎖、反応が穏やか |
6〜7 |
中性 |
毛髪に優しく、ダメージが少ない |
8〜10 |
弱アルカリ性 |
キューティクルが開き、薬剤の浸透が良くなる |
11以上 |
強アルカリ性 |
浸透性が非常に高いが、ダメージリスク大 |
薬剤のpH値が高すぎるとキューティクルが過度に開き、必要以上に内部構造へ影響を与えることがあります。これにより、毛髪のタンパク変性や切れ毛、パサつきといった問題を招くことがあります。特に、pH10以上の薬剤を使う場合には放置時間やアイロン操作とのバランスを細心の注意を払って調整する必要があります。
一方で、酸性領域のpHでは、反応性が穏やかでありながらも薬剤がしっかり作用するGMTなどの成分を使用することで、繊細な施術が可能です。酸性ストレートが近年注目されているのも、こうしたpHコントロールの重要性が見直されているからです。
具体的なpHコントロールの実践方法は以下の通りです。
・薬剤のpHを製造元の資料で必ず確認する
・前処理剤や中間処理剤でpHバランスを整える
・施術中の毛髪の状態に応じて、アルカリ度を調整する
・軟化具合を見ながらpH調整する
さらに、縮毛矯正では「pHコントロール+還元剤の選定」がセットで機能しなければ、思った仕上がりが得られません。pHが低い状態で強力な還元剤を使用しても、十分な反応が得られない場合があるため、pH調整は薬剤の効果を最大限に引き出すための鍵といえます。